理学療法士であり
パーソナルトレーナーでもある私の視点から
「姿勢」や「痛み改善・予防」
についてのお話をしています。
「ボディメイク」も得意で
東京をメインに活動しています、村田育子です(^^)/
現在「足の長さが左右違う(以下:脚長差)」
をテーマにシリーズで解説していて
「脚長差の原因」について
一つずつ各論的な話をしています。
本日は
「成長期での荷重の偏り(ヒューター・フォルクマンの法則)によって生じる脚長差」
というテーマで解説していきたいと思います。
・成長期のお子様を持つ親御さん
・小中学校の部活の顧問の先生
に是非読んで頂きたい頂きたい内容です。
同じ内容をYou tubeでもアップしています。
動画の方が良いなという方は こちら 。
【目次】
1. 成長期での荷重の左右差は脚長差の原因となる?
2. ヒューター・フォルクマンの法則
3. ヒューター・フォルクマンの法則をもっと詳しく
4. 症例紹介
5. まとめ
1. 成長期での荷重の左右差は脚長差の原因となる?
成長期において
体重の乗せ方に左右差があると
脚の長さが左右違ってくる…
そんなことはあると思いますか?
「それくらいで脚の長さが変わるの!?」
と思う方が多いと思いますが、
骨がぐんぐん伸びる成長期において
・左右どちらかに偏った立ち方
・左右どちらかの足を踏み込むスポーツ
など
体重のかけ方の左右差は
脚長差の主要な原因となります。
実際に臨床で一番よく遭遇する問題です。
2. ヒューター・フォルクマンの法則
骨の成長には
「ヒューター・フォルクマンの法則」
というのがあります。
ヒューターさんとフォルクマンさんが提唱したもので
骨端成長軟骨板への
☆圧縮ストレスの過剰
→骨の成長を減少させる
☆圧縮ストレスの低下(または伸張ストレス)
→骨の成長を増加させる
という法則です。
(骨端成長軟骨板については前回記事を是非ご参照下さい。)
例えば、左脚にばかり体重をかけて立つ癖は
左脚の軟骨板への圧縮ストレスが過剰となり
左脚の成長が減少してしまう。
結果、左脚の方が短くなる、という法則です。
3. ヒューター・フォルクマンの法則をもっと詳しく
軟骨板への圧縮ストレスが過剰になると
なぜ骨の成長は減少してしまうのでしょうか?
細胞レベルでは何が起きているのか?
ヒューター・フォルクマンの法則について
もう少し詳しく見ていきます。
成長期の骨には「骨端成長軟骨板」があり
骨はこの部分で縦に成長していきます。
通常、骨端成長軟骨板の細胞は綺麗に整列して並んでいます↓
(前回記事参照)
ここに過剰な圧縮ストレスがかかり続けると
この「細胞の配列が無秩序になった」
という研究があります。
そして細胞を取り巻く部分(細胞外マトリックス)が減少し
そこに存在するコラーゲンなどのタンパク質に
「化学的な変性が生じた」という研究結果でした。
簡単に言うと、タンパク質の組成が脆弱になったのです。
つまり
圧縮ストレスの過剰により
整列していた細胞の配列が乱れ
細胞外の基質が減り
タンパク組成が脆弱になり
それによって細胞分裂や細胞肥大が減少し
骨の成長が減少した
これがヒューター・フォルクマンの法則の
細胞レベルで起こっていることです。
4. 症例紹介
実際の臨床で様々な脚長差に遭遇してきましたが
この「ヒューター・フォルクマンの法則」で
脚長差が生じたと思われるケースが最も多いと感じています。
脚長差自体は1㎝以下の何となく「やり過ごせる」程度のものが多く
最も埋もれていて
知らないうちにトラブルの原因になている問題
とも言えます。
それでは実際に担当した事例を紹介させて頂きます。
右脚重心で立つ癖が子供の頃からあり右脚が短い↓
同じく右脚重心で立つ癖があり、右脚が短い↓
頭を左に傾ける癖があり
それによって重心が左に偏り、左脚が短い↓
長時間の電車通学を左重心で行い、左脚が短い↓
他にも
・テニスで右ばかり踏み込んで右脚が短い
・剣道で右で踏み込んで右脚が短い
・クリケットで右で踏ん張り右脚が短い
…などなど。
特にスポーツは少なからず何かしら左右差があり
脚長差に影響しているケースが多い印象です。
このように知らず知らずにうちに
成長期におけるちょっとした荷重の左右差で
脚長差が生じてきます。
臨床上、本当によく遭遇します。
実際これはミリ単位の脚長差で
普通に生活していたら気付けないレベルが多いです。
でもそのミリ単位の脚長差は
少しずつ着実に身体に負担をかけてしまいます。
この脚長差は大人になってから治すことはできません。
予防できるとすれば成長期の子供のときだけなんです。
なので
お子さんに左右どちらかに体重を乗せて立つ癖があったら
親御さんが注意してあげて欲しいです。
そして部活の先生のようなスポーツを教える大人は
子供の将来のために
左右差コンディショニング系のエクササイズを
部活の最後のストレッチの時に導入するなど
何かしら対策をとるのが大事だ
という考えを持ってくれる人が
一人でも増えると良いなと思います。
(特に日本は部活まじめスポ根文化なので余計心配なのです涙。)
というか
成長期の荷重の左右差は脚長差を生むリスクがある
ということさえ知っていれば
自然と「予防しなければ!」
という意識が向くと思うんですよね。
大人になって身体にトラブルを抱えてからの対処に携わることが多い理学療法士として
一人でも多くの大人にこのことを知ってもらって
脚長差がある子供が少しでも減って
将来トラブルで悩む人が一人でも減ることを切に願います。
5.まとめ
・骨の成長にはヒューター・フォルクマンの法則がある
・軟骨板への過剰な圧ストレスは骨の成長を減少させる
・これが片側で生じると脚長差の原因となる
・立ち方の癖やスポーツでの左右差に注意が必要
本日は以上になります。
お読み頂きありがとうございました。
この記事が誰かの健康の一助となりますように。
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