理学療法士であり
パーソナルトレーナーでもある私の視点から
「姿勢」や「痛み改善・予防」
についてのお話をしています。
「ボディメイク」も得意で
東京をメインに活動しています、村田育子です(^^)/
現在「足の長さが左右違う(以下:脚長差)」
をテーマにシリーズで解説していて
「脚長差の原因」について
一つずつ各論的な話をしています。
本日は
「大腿骨頚部骨折での人工骨頭置換術は脚長差の原因となるのか?」
というテーマで解説してみたいと思います。
同じ内容をYou tubeでもアップしています。
動画の方が良いなという方は こちら 。
【目次】
1. 人工骨頭置換術で脚長差は生じるのか?
2. 人工骨頭置換術で脚長差が生じる理由
3. 人工骨頭置換術によって脚長差を呈した症例
4. まとめ
1. 人工骨頭置換術で脚長差は生じるのか?
大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶ骨折)とは
太ももの骨の付け根の骨折で
高齢の方によくある骨折です。
このレントゲンでは
向かって右側が骨折しているのが分かります↓
治療は手術、特に人工骨頭置換術が選択されることが多いです。
この人工骨頭置換術ですが
術後に脚長差を生じる可能性があります。
2. 人工骨頭置換術で脚長差が生じる理由
なぜ人工骨頭置換術で脚長差が生じるのか?
その理由を理解するために
手術方法を一緒に確認してみたいと思います。
(私が実際にオペ見学させてもらった情報を元にしています。私は医師ではないので情報に偏りがあること前提で読んで頂ければと思います。)
まず全身麻酔がかかります。
仰向けの患者さんを
横向き寝(手術する側が上)にして
骨盤を器具で固定します。
滅菌された紙で身体を覆うのですが
手術する脚だけが紙から出た状態になります。
(南国少年パプワくんの鯛のキャラクターを
思い出すのは私だけ?)
メスを入れます。
骨まで到達したら
付け根で骨を切り落とし
骨頭をポコッと取り出します↓
次に骨の中心に穴をあけます↓
そしてその穴に金属棒を埋めます。
(これをステムと言います。)
ステムを埋め込むとき
「カンカンカン!」と
クギを打つように入れていきます。
埋め込まれたステムの上部は
骨から少し飛び出るかたちとなります↓
次に、打ち込んだステムにネックを取り付けます↓
そのネックに「小ボール」を取り付けます↓
そしてその「小ボール」に
「大ボール」を取り付けます↓
そして大ボールを本人の骨盤のカップにはめ込んで
股関節の動きをチェックします。
ボールのサイズはカップに対して
ちょうど良い大きさである必要があるため
(小さいと脱臼、大きいと可動域が狭くなる)
いくつか大きさの違うボールをはめ込んで
どれが一番フィットするか確認して
ボールの大きさを決めていきます。
ボールの大きさが決まったら
ここでついに!!
先生は両ひざを合わせて
太ももの長さに差がないかをチェックします。
脚長差のチェックです!!
この時、太ももの骨の長さが同じであるためには
ステムの飛び出+ネック+小ボール+大ボール
が反対側の同部位と同じである必要があります↓
(例えばこの症例では↑術側の方が長くなっているのが分かります。)
術中に脚長差があった場合
①小ボールの大きさを変える。
(メーカーに寄るが何種類かあるそう)
②ネックの長さを変える。
(私が見学した際は1種類しかありませんでしたが、3種類くらいあるメーカーもあるそう)
③ステムを変更する。
(ステムを変更することで飛び出具合がちょっと変わるそう)
これらの策で脚長差ができるだけ出ないように調整するそうです。
しかし1ミリ単位でぴったり差がないようにするのは
さすがに限界がありそうですよね。
そもそも既製品ですし。
また、術中の
「両ひざを合わせて」の脚長のチェックですが
手術しない側は滅菌された紙で覆われています↓
そんなベールに覆われたような状態で
ミリ単位の脚長差を正確にチェックするのは
そもそも論、難しいですよね><
そして加えてこの脚長のチェックは
「横向き寝」の状態で行われています。
リハビリの現場で実際に脚長差をチェックする際
まさか横向き寝の状態でチェックはしません。
骨盤が傾いたりで
正確にチェックすることができないからです。
なので術中に行っている脚長差のチェックは
ミリ単位で正確に!!
という訳にいかないのは当然です。
だからこそ術後のフォローに携わる理学療法士が
脚長差のチェック・対応含め
しっかり行うべきだ、とも思うのです。
3. 人工骨頭置換術によって脚長差を呈した症例
60代女性。
夜中にトイレに起きた際に階段で転倒。
たまにしか使わない睡眠薬が効き過ぎたそうです。
人工骨頭置換術が施行され
退院後のリハビリで来院されました。
まず初見でぎょぎょっ(゜-゜)
びっくりするくらいの脚長差でした。
レントゲンで確認しても明らかな差でした。
術側が長くなっていて
術側のひざを曲げないと立っていられないくらい
でした。
そんな状態なので
手術した側のひざ周りの筋肉が緊張していて
「股関節よりひざが痛い」とのことでした。
まずは手術していない側にインソール(ヒール)を入れ
短い脚を長くすることで対処しました。
しかし差が大きかったためインソールだけでは無理で
アウトソールも駆使して
何とか許容範囲内に脚長差を補正し
ひざの痛みは改善に向かったことを覚えています。
このように
人工骨頭置換術で脚長差が生じる方は
実際の臨床を通しても多いと感じています。
私的には
術側が長くなっているケースが多いかなぁ
という印象ですが一概には言えません。
とにかく術後の脚長差のチェックは重要!!
というのは間違いありません。
4. まとめ
・大腿骨頸部骨折で人工骨頭置換術が施行される
・人工骨頭置換術で脚長差が生じる可能性がある
・理由1:使用する金属はそもそも既製品
・理由2:術中の脚長差チェックはそもそも難しい
・術後の脚長差チェックと対応は理学療法士が携わるべき課題と感じている
本日は以上になります。
お読み頂きありがとうございました。
この記事が誰かの健康の一助となりますように。
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