このブログでは
理学療法士であり
パーソナルトレーナーでもある私の視点から
「姿勢」や「痛み改善・予防」
についてのお話をしています。
「ボディメイク」も得意で
東京をメインに活動しています、村田育子です(^^)/
現在「足の長さが左右違う(以下:脚長差)」
をテーマにシリーズで解説していて
本日は
「脚長差によって仙腸関節痛を呈したR様」
というテーマで症例報告をしてみたいと思います。
前回記事 では「脚長差は仙腸関節痛の原因となるのか?」というテーマで仙腸関節の構造も含めてお話しました。
本日の内容はそれを踏まえての内容なので、先にこちら↑を読んで頂いてからの方が理解しやすいと思います(^^)/
同じ内容をYou tubeでもアップしています。
動画の方が良いなという方は こちら 。
【目次】
1. 症例紹介
2. R様の立位姿勢
3. R様の歩行
4. R様への治療戦略
5. まとめ
1. 症例紹介
60代男性、お悩みは左の仙腸関節痛。
30代の頃からの症状。
常に痛い訳ではなく、時々痛くなる。
我慢できる程度の痛みで何となくごまかしてきた。
朝起きてすぐや
しばらく動かないでいて急に動くと痛くなる。
でも、慎重に動き出せば回避できる。
痛くなるタイミングが
「起床直後」や「しばらくじっと動かないでいて急に動いた時」というのは
関節が不安定で痛くなっていることがほとんどです。
R様の左の仙腸関節は不安定で痛みが出ているのだろう
とまず予想ができます。
2. R様の立位姿勢
ではさっそくR様の立位姿勢を見てみます。
本日は仙腸関節痛についての解説なので
骨盤にフォーカスしていきます。
(骨盤が見えないので線を引いてます汗↑)
R様の骨盤は「左が高い」状態でした。
左の骨盤の方が高いと
左の仙腸関節が重力線に対し平行に近づくため
左仙腸関節にはズレる力:剪断ストレスが働き
関節は不安定になります。
(詳しくは 前回記事 参照)
以上のことから
R様の左仙腸関節の痛みの原因は
「骨盤の傾きによる剪断ストレスでの不安定性」
と考えられました。
ではなぜR様の骨盤は左が高くなっているのか?
お身体を色々チェックしていくと、
「脚長差」が原因であることが判明しました。
R様のお身体には
「左脚が右より少し長い」という脚長差の問題がありました。
3. R様の歩行
次にR様の歩行を見てみます↓
右の着地の瞬間に、重心が「ドシン」と落ちているのが分かるでしょうか?
右脚の方が短いので当然ですね。
では、左はどうでしょうか?
骨盤が「クイッ」と左斜め上に揺れているのが分かるでしょうか?
(トレンデレン様)
歩行のリズムが
「ドシン・クイッ・ドシン・クイッ」
という感じになっています。
スローで見てみます↓
左片脚で骨盤がクイッと揺れていますよね↑
この左片脚の骨盤の「クイッ」という
「勢いのある動き(揺れ)」が
左の仙腸関節に「ズレる力(剪断力)」を加えてしまっています。
まさにこれが
左仙腸関節を不安定にしていると言えます。
4. R様への治療戦略
・立位で左の骨盤が高いこと
・歩行の右着地でドシンと重心が落下すること
・歩行の左片脚で骨盤が左上にクイっ揺れること
これらを修正すれば
左仙腸関節の痛みの改善への道が見えてきます。
では、さていったい何をすれば良いでしょうか?
その答えはシンプルで
これらが生じている「原因」を潰せば良いということになります。
これらの原因は右脚が短いという「脚長差」なので
・短い右脚を伸ばすか
・長い左脚を短く切るか
で解決できます。
しかしそれは不可能なので…
こんな時に頼りになるのがインソールです。
短い方の右の踵の下にパッドで厚みを足し
「右脚を機能的に長くすること」が解決の助けとなります。
「脚長差を補正」するという訳です。
実際、R様にはどれくらいの厚みのヒールパッドが良いのかチェックしたところ
2mmが一番バランス良く歩行できていました↓
↑骨盤の揺れ方が均等になったのが分かるでしょうか?
ご本人様も「バランスいいね!!」とのことでした。
(たった2mmでこんなに変わるの!?と驚いた症例でもありました。)
このように
R様へのまず最初に行うべきアプローチは
「2mmの右ヒールパッド」となります。
(もちろん日常で使用する)
R様のその後…ですが
色々エクササイズも行い、左仙腸関節痛はほぼ消失。
立位姿勢も少しずつ変化してきています↓
(骨盤はよく分からないけど、肩の左右差は良くなったのがよく分かる写真になってます笑↓)
※ちなみに理学療法士的には左立脚のトレンデレンで教科書的には「左中殿筋の筋トレ」がまずアプローチとして挙がることが多いかと思います。が、あまり賛同できません。なぜトレンデレンになっているのか、その原因を潰すことが重要でR様の場合は脚長差でした。R様の左中殿筋は弱っているどころかむしろ強く(トレンデレンで毎回遠心性収縮で鍛えられている)右の中殿筋は弱くなっていました(短縮弱化)。中殿筋にフォーカスすれば、右中殿筋の荷重下での遠心性収縮の練習などは有効で実際にセッションでも行っています。が、とにかくこの場合の治療の第一選択は筋トレよりも脚長差の補正!と言いたいのです~。
5. まとめ
・R様は脚長差があり左脚の方が長かった
・脚長差により立位では骨盤が左が高くなっていた
・歩行では左立脚で骨盤が左挙上へ揺れていた
・それら剪断ストレスによって左仙腸関節に痛みが生じていた
・右へのヒールパッドで脚長差を補正した
・すると左仙腸関節痛は改善した
お読み頂きありがとうございました。
本日は脚が長い側に仙腸関節痛を呈した症例についてお話しました。
次回は短い側の仙腸関節にかかるメカニカルストレスについてお話してみたいと思います。
この記事が誰かの健康の一助となりますように。
(R様からは「お客様の声」を頂いています。*ページ一番最後の方。)
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